アメリカ研究会 特別招聘講演会(夕食研究会以外予約不要)

 

日時:20131220日(金)13001430

場所:大阪大学箕面キャンパスE棟3階学術交流室

http://www.osaka-u.ac.jp/ja/access/accessmap.html#map03(アクセスマップ)

http://www.osaka-u.ac.jp/ja/access/minoh.html(キャンパスマップ)(#3の建物の3階)

講師:大賀哲(おおが・とおる)先生(九州大学法学研究院 准教授)

講演題目:プライベート化する対外政策―日米経済関係における財界人の役割 

概要:昨今のグローバル・ガバナンス論においてプライベート・ガバナンスが注目を集めている。従来の国際レジームなどに見られるような国家中心型秩序に対して、企業やNGO等の非国家主体に拠るトランスナショナルなネットワークを媒介としたプライベート・ガバナンスが着目されているのである。しかし現実にはパブリック/プライベートの線引きは容易ではなく、政府組織と企業・NGOの協働(あるいは政府組織を前提とした上での企業・NGOの参画)といったパブリック・ガバナンスの「プライベート化」が広範な範囲で進行している。

こうしたグローバル・ガバナンス論の動向を踏まえて、本稿ではそれを二国間外交に適用し、対外政策における「パブリック・ガバナンスのプライベート化」を検討する。言うまでもなく二国間外交とは、意思決定主体も実施主体も国家政府であり、その意味で典型的なパブリック・ガバナンスである。本稿の主旨は、パブリック・ガバナンスの典型事例であると考えられている二国間外交においても「プライベート化」が進行しているということを考察することにある。

具体的には経済摩擦・貿易摩擦の激化した1980年代の日米経済関係に着眼し、日米財界人会議、日米経済協議会、日米経済諮問協議会(後に米日経済協議会)、日米賢人会議等の財界人の活動が日米両政府の経済交渉の中で如何なる役割を果たし得たのかを考察する。考察のため便宜上、@圧力団体仮説(財界人は自国の経済界の利害関係を代弁している)、A政府代弁仮説(自国政府の立場を代弁している)、B認識論的共同体仮説(財界人の集合体が独自の国際規範を形成している)を立てているが、上記の財界人の会合や活動には、これらすべての要因が認められる。保護主義や貿易不均衡についての議論は@Aの典型であるし、「世界貿易体制への安定」や「世界経済システムの機能」といった議論はBの現れである。また、市場志向型分野別協議(MOSS協議、1985年開始)や日米構造協議(SII1989年開始)などのように財界人の形成していた規範的な議論が後の政府レベルでの経済交渉に大きな影響を与えた例も認められる。

本発表では、これらの事例分析を通じて、日米経済関係において財界人が果たした役割を考察し、パブリック・ガバナンスの「プライベート化」の先進事例として1980年代の日米経済関係を再検討する。

 

参考文献がございます。ご講義は参考文献を読んでいるという前提で進められます。

 

 

夕食研究会:17301900 院生・若手研究者が最新の研究状況を3-5分で披露(今回は英語になります)し、大賀先生(および香港大学からお越しのTeo先生)にご講評いただきます。テーマは自由。夕食をいただきながら、非公式な雰囲気で行わせていただきます(要予約)

 

【スピーカー紹介】 大賀哲(おおが・とおる)先生。1975年東京都生まれ。2005年英国エセックス大学政治学部博士課程修了(Ph.D. in Ideology and Discourse Analysis)。神戸大学大学院国際協力研究科・助教を経て、2008年より九州大学大学院法学研究院・准教授(国際政治学・アジア政治論)。この間、オックスフォード大学セントアントニーズコレッジ・客員研究員、ケンブリッジ大学アジア中東学部・客員研究員など。主要業績として『東アジアにおける国家と市民社会−地域主義の設計・協働・競合』(柏書房、2013年)、『北東アジアの市民社会−投企と紐帯』(国際書院、2013年、編著)、『国際社会の意義と限界―理論・思想・歴史』(国際書院、2008年、共編著)等多数。

 

参考文献入手および夕食研究会予約連絡先:杉田米行 sugita@lang.osaka-u.ac.jp